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 超簡易体験版
 
その日、“きみ”は荒野にいた。
 
 “きみ”は自分が所属しているユニオンに命じられ、この地に派遣されてきていた。
 
「お前、ジャパニーズだろ?」
 声を掛けてきたのは全身革製品のバイカースタイルで固めている無精ヒゲの青年だった。
 
「武道家的なストイックさが滲み出ているその格好、いかにも紅き牙って感じだけど、合ってるかい?」
 “きみ”はうなずいて同意する。
 
「俺はグリーンオールウェイズのもんさ。ようこそ、パーティー会場へ」
 相手の手を握り返しつつもパーティー会場と言われて一瞬とまどう“きみ”。
 しかし、すぐに理解する。
 これからこの場にいる全ての人たちと力を合わせて事に当たらなくてはならないのだ。
 そう思い至ると握手する手に自然と力が入ってしまう。
 
「おわっ、いててっ!? お前、武道家なんだろ? 力比べとか勘弁してくれよ!?」
 
「なに? 力比べだって? 私も混ぜろ!」
 軍服をプロテクターで覆った巨漢の男がやってきた。
 肩に掛けたトリガーであろうマスケット銃がまるでつまようじだ。
 
 きっと草薙のメンバーなんだろう。
 
 “きみ”は力比べを丁重に辞退したあと、頭を下げて挨拶をする。
 
「ああ、よろしくな! だが、私が年長者だからといって、余計な気づかいはするなよ? この場は年齢も経験もそれぞれのユニオンでの立場も関係ない。ただ、ひとつの目的のために集められてるんだからな」
 
 “きみ”もよく知る目的、それは“ドラゴン退治”。
 
 有史以来、人類共通の敵であったドラゴン。
 2002年以降、竜と人類との戦いは激化の一途を辿り今に至っている。
 
 “きみ”やここにいる者たちは皆、それぞれが所属しているユニオンからの指示でこの地にいるドラゴンを倒す力を持つ者ことベオウルフたちなのだ。
 
「倒したドラゴンの亡骸については、わたしたちクリームヒルト・ラボラトリーで処分させていただくということでよろしいかしら?」
 
 “きみ”たちの話に白衣の女性が入ってきた。
 すると軍人が待てという仕草で手を突き出す。
 
「おっと、待ってくれよ女医先生。
 連中の死骸は我々にとっても、お宝なんだからな」
 
「処分はお任せするとしても、売却金額を各ユニオンへ均等に分配していただかなくては困りますよ」
 
 軍人の後ろから小柄な女学生が顔を出してそう言った。
 きっとドラゴン退治専門学科がある埼玉県立大東京中等教育学校の生徒なんだろう。
 
「あなたもそう思うでしょ?」
 女学生から同意を求められてうんうんと首を縦に振って同意する“きみ”。
 
「あいつらだって口にこそ出さないけどよ、きっと俺らと同じ考えだと思うぜ」
 バイカーがそう言って指差した方には、黙って独り空を見つめているスプライトのスーツを着こなしている女性がいた。
 
 その見るからに近寄りがたい雰囲気は、きっとSDDの女ギャングに違いない。
 
 そして、もう1人。
 
 シンプルな純白タイツとタンクトップの上に原色が渦巻いているマントを羽織ったスタイルの良い男性が、杖を持った手を天に掲げつつ、片足を上げて虚空を見つめている様子。
 
 きっと不揃いの林檎、あるいは腐った蜜柑たちの失格者たる所以について略して“りんごみかん”から派遣されて来ている人なのだろう。
 ギャングとは別の意味で近寄りがたい雰囲気がびんびんと漂っている。
 
「もちろん、今回の竜退治で生じた利益はきちんと分配させていただきますわ。そうでなければ、皆さんもわざわざこんなところまで来た甲斐がないでしょうから」と女医は言う。
 
 ドラゴンの存在は人類にとって脅威だが、その死骸はこの戦いで得られる利益そのものだ。
 
 ドラゴンの皮、肉、骨……その全てが様々な分野での技術進化と発展をもたらしている。
 
「今回このポイントへ進攻している竜は、おそらくソルジャーのドラゴンでしょう。ただし、雑魚といっても標準サイズよりもやや大きいとのことなのが気がかりですが……ま、この人員数でなんとかなるでしょう」
 
「当然だろ、女医先生。この場にいるのは全員トリガー持ちのベオウルフだぞ? 雑魚ドラゴンごとき、止められなくてどうする」
 
「さっすが、軍人さん。頼もしいなぁ」と自分もベオウルフなのにも関わらず、女学生はニコニコと微笑んでいる。
 
「ところで……」とバイカー。「タイタニア・テンポラリー・サービスからは派遣されてないのか? それっぽい姿のヤツは見えないんだが?」
 
「ああ、それなら……」と女医先生。「トリガーの都合でまだこちらへ向かっている途中だそうですよ」
 
「ふうん……どんなトリガーを使ってんだか知らねぇけどよ、この分じゃ間に合わないんじゃねぇのか?」
 
 “きみ”がなぜ間に合わないのだろうか? と首を傾げると、その回答は女ギャングの口から伝わってきた。
 
「竜が来る……」
 
 “りんごみかん”のタイツ男も感じたのだろう。
 奇妙なポーズを止めたかとおもうと“きみ”たちがいる方へと身体を向けた。
 
「さぁ、皆で邪悪なる存在の鼓動を止めるのです!」
 
「えーっと……つまり、ドラゴンをやっつけようってこと?」
 女学生がそう言うと、タイツ男はにっこりと微笑んだ。
 
 ――空気が変わった。
 
 それまで和気あいあいとしていた雰囲気が一変する。
 
 女ギャングが見つめる空を皆で一斉に凝視する。
 
「それじゃ……攻撃プランはどうする?」
 女学生がそう呟くと、すぐに軍人が答えを出した。
 
「正面からの攻撃で引きつけておいて、側面から大ダメージを与えて仕留めるというのはどうだ? ……もちろん私は正面からいかせてもらうがな」
 
 タイツ男が握っている杖ごと手を挙げた。
 
「ボクも共に正面から挑ませてもらう。そうしなければ魂は輝きを見せない」
 
「では、わたしは……」と女医先生は言う。「あなた方がドラゴンを引きつけている間に側面から攻撃をさせていただきます」
 
「じゃ、あたしもー!」と女学生。
 すると女ギャングが呟いた。
 
「貴様らだけでは戦力的に不安だ。私も側面からあたるとしよう」
 
「正面2、側面3か……戦力的にちょい微妙な感じだな」バイカーはそう言うと、“きみ”を見る。「俺は念のため、援軍を呼びに行くことにするけど、お前はどうする? 俺としては単独行動はしたくないんで付き合って欲しいところなんだが……」
 
 ベオウルフたちの視線が“きみ”に集まる。
 
 “きみ”は即座に決めなければならない。
 
 ドラゴンに対してどう攻撃するのかを。
 
 もしくは、ここは戦わず援軍を呼びに行くのに同行するのかを。
 
 
 
■行動選択肢
 
A:正面から正々堂々とドラゴンに挑む
 
B:ドラゴンの側面に回り込んで攻撃する
 
C:援軍を呼びに行く
 
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